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[N-ex1] SHOW CASE N を記録する 〜後編〜

2006年12月19日 13:48更新/執筆者:宮内俊宏 写真:清水隆史、平松マキ(※※)

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2006年10月28日(土曜日)にはじまったイベント・N-ex1 SHOWCASE N
古い酒蔵の奥の、奥の、いちばん奥のイベント・スペースで展開されたアートの遊園地
そして、11月4日(土曜日)、8日間の開催最終日にそこで行なわれた出来事について

特集:[ N-ex1] SHOWCASE N を記録する 〜後編〜

 「西之門よしのや」の門を入ると、広い中庭の周囲を蔵のような造りをした数棟の建物が囲みます。味噌と酒、器の店、レストラン、ギャラリーなど、いろいろなテーマを持った「よしのや」の施設。善光寺門前を散策する人達が自由に往来でき、自由に見学でき、公園のような中庭では自由にひと休みできる、回遊型の店舗施設です。
 その中ほどにある明治時代に建造された古い酒蔵が今回のイベントの舞台となりました。軒先に「酒林」という杉の葉で造作された玉が下がり、玄関から両脇の古い階段で中二階のような高床に上がると、木目の粗い板張りの床と生成りの壁、剥き出しの梁や柱。そこは歴史を感じる古い建築物なのですが、面白いのは、その下、半地下のような位置に近代的な酒造工場がガラス越しに見えるのです。ここは、この古い酒蔵を入口にして奥へ延びる酒造工場の見学コースでもあります。
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 144人のちぎり絵が展示されたその酒蔵の奥から鉤の手に10メートルほどの通路が続き、その奥に、近代化された酒造工場を見学できる広いホールがあります。ホールの両壁はガラス張りで、さまざまな形状の銀色のタンクや、太いパイプ、ダクト、コンピューターの計器パネルなどが整然と複雑に配置された工場内を一望することができる仕組みです。
 この縦長の広いスペースいっぱいに、8日間の開催期間中、アートの遊園地「nana*t land」が出現したのでした。

【nana*t land】

 ここに展示されたのは、nana*t がこの秋に実践した途方もない活動の集大成でした。

 nana*t の5人は、2006年の9月8日から10月7日までの30日間、「1日1作」というとんでもない試練に立ち向かっていました。これは、各自がひとつのコンセプトを持ち、毎日毎日、必ず1日にひとつの作品を制作し、更にそれを毎日ウエブ上で発表してゆくという試みです。
 リーダー&デザイナーである中沢定幸さんは、ダジャレでネーミングされた「キャラ」を30日間創り続けました。初日から「オカマキリ」という名のオカマのカマキリ、先端が熊の顔をしたマッチ「クマッチ」、サイのツノが生えた「サイコロリン」というトボけたサイコロなど、かなりハイペースで始まっているのですが、それが最後まで落ちることなく、なかなかに唸らせるキャラクターが30個並んだときはもう喝采モノでした。
 同じくデザイナーの相澤徳行さんは、いろいろな模様と配色で四角形を構成したテキスタイル集「色日記」。すっきりと配置された視覚的に爽やかな印象の相澤さんデザイン。いくぶん和的な詩情の流れる美しい模様で相澤さんの2006年秋の毎日を活写した、ほんのりと体温を感じる作品となっていました。限定されたパターンの中で数多の心情や出来事を描写しきっているのが見事です。
 「1日1作」の明ける翌日に結婚式を控えていたイラストレーターのながはり朱実さんは、もうそのまま、カウントダウン30日間の「絵日記」です。ガァーっと勢いのある明るいタッチで描かれる30日間のいろいろな出来事、結婚式という一大イベントにまつわる特有の行事、感慨、ハードな仕事の傍らで破綻しながら進むドタバタな毎日は、とても親近感を覚える、切実で、ホンワリと笑える物語でした。
 アオキタカエさんの「コースター日誌」は、とにかくめっぽう美しい。万華の色、模様の端切を縫い合わせて作られているのですが、どこにこれだけ膨大な種類の奇麗な布があるのか、ひとつとして同じ布が使われていないのです、たぶん。しかも、毎日の心情が絵と重なって伝わって来る。なんというか、知恵とセンスと克己心、う〜ん、そんな簡単な言葉で表せるものではない、クラフトデザイナーの究極の仕事なのではないでしょうか。
 轟久志さんはいつも楽しい遊びを考えてるようなイタズラっぽい風貌のデザイナーです。「三十寿司ネタ印」は、寿司にまつわる30種類の品々を「文字」や「姿」などいろいろな切り口で図案化した知的で楽しい遊びでした。「鮪」「烏賊」に始まって「稲荷鮨」「太巻」「ガリ」などを交えながら最後の「アガリ」まで、毎日寿司ネタを図案化し続けています。収集癖に点火されそうなアイテム。
※参照:nana*t web site

 轟さんはこのアイディアを nana*t land でさらに徹底的に「遊び」にしました。ネタ印を30種類の四角いコースターにして青いアクリルで模した釣り堀に並べ、磁石を使った釣り竿で釣れるようにしたのです。しかも池の外周には電動プラレールの回転寿司。寿司ネタを乗せたプラレールが周回を重ねるその周りで、大人も子供もみんながニコニコ笑いながら釣り糸を垂らしているのです。ゲームセンターのゲームのような「大物を釣って高得点」というカタルシスは一切ありません。「海胆」は何て読むんだろう、と思いながら想像の世界でぼぉっと遊んでいられる場所なのです。
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 nana*t land は、ウエブで展開されたオリジナル・アイディアをいくつもの楽しいアイディアで膨らませて、訪れた人々が思い思いに遊んだり、ぼぉっとしたり、イタズラして笑ったりできるものに変化させた、まさに良いアイディアのリサイクルが実現された遊園地でした。単にアイディアを実空間に直訳しただけではありません。この釣り堀のように、最初のアイディアをリサイクルさせて、リサイクルによって生まれた新しい空間的なアイディアを付加して、オリジナルが持っている知的なエネルギーをさらに増幅させているのだと思います。

 中沢さんのキャラクター達は、その中からいくつかの代表が選出され、大きくカラフルに変化しました。それぞれ、顔を出して遊ぶパネルや、さらにおかしな変身小物が加わって、そのダジャレ・ネーミングはいっそう面白く活き活きした物に転化されています。
 アオキさんのコースターは、これまたアオキタカエの風合いで制作されたいろいろな雑貨、生活用品などと一緒に居心地良さそうなこたつの周りに配置されました。工夫を凝らした楽しい生活がポッカリとそこに出現したような、ちょっと幻想的な光景が訪れる人のくつろぎを誘っている様子。
 そして、相澤さんの色日記は、落ち葉という別の形に進展された新しいパターンが加わって、同じトーンで作られた美しい行灯屏風と共に、また違った新しい美しさを表現していました。風が冷たくなり始めた秋の清澄な風情を、あかりの灯った屏風が懐かしく暖めているようです。
 ながはりさんの30日カウントダウン絵日記はスゴロクに変わっていました。絵日記が丸いコマに印刷され、ホールの床、入口からホールの外周に沿って奥の方まで、それこそ全長30メートル近い、笑ったまま進めるスゴロクです。ゴールにはちゃんと結婚式当日のふたりの写真がお出迎え。とてもポップなアイディアの変遷なのでした。nana-tland.jpg
【 nana*t shop 】

 こうして8日間展示された nana*t land に、最終日の11月4日には nana*t shop、お店が登場。ここには nana*t が生んだいろいろなアイディアを商品として展開した品々が並んでいました。たとえばマスク。マスクは白いガーゼでできているのが当たり前なのですが、ここでは、中沢さんのキャラクターがプリントされたミルクココア色のマスクを売っているのです。これは僕も思わず買ってしまいました。こんなマスクをしてたら風邪をひいた日でも楽しいのです、きっと。ほかにも、座敷箒、携帯ストラップ、バッグ、文具、絵はがき、そのほか、かわいい面白いきれいな小物がいろいろ並んでいます。

 2004年の「Tシャツ展」に始まり、トートバッグ、ペット用品など、これまでも日常生活に視点の中心を置いた作品展を意欲的に進めてきている nana*t 。その活動の帯びている意義が、この nana*t land と nana*t shop で伝わってきたように思います。
 ここでは nana*t のホームページから中沢さんの言葉を抜粋してお借りします。
 「今の世の中から争いを無くすのは難しい。だからせめて自分の作品は「ふつうの生活」をテーマに、物づくりの楽しさ、使う楽しさ、飾る楽しさを感じられる暖かいものでありたい。」
 それは、このイベントを通して我々が伝えたい気持ちとも共通するものでした。

 アートは普通の生活をいとなむ街の中にあって、人々の気持ちを少し楽しくさせたり、幸せにしたりするものであってほしい。人を幸せにするアイディアは、人から人へ伝わりながらどんどんリサイクルされて、もっと楽しい、もっと大きな幸せの力を生むものになってほしい。作品に触れて何かを感じた人が自分の場所へ持ち帰って新しい何かを始められるように。

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 さて、次はいよいよ最終夜、ライブパフォーマンスの様子を
  SHOW CASE N を記録する 〜これも後編〜 でお伝えします。
   おたのしみに。

〜つづく〜


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