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オトナリ GREEN SESSION (その2)

2008.08.16更新

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 古来、善光寺平から飯綱山、戸隠山に至る山岳地帯は多くの修験者や参詣者が集まる同時参詣の回廊。中間地点にある飯綱高原は古くから修験道開祖の地といわれる山岳信仰の聖地でした。
 大座法師池はそんな飯綱高原の中央に位置するカラマツ林をたずさえた標高1,030メートルの湖。すり鉢状に囲まれた山々から下りる空気の響きが集まる、今でも神秘性を失わない美しい湖です。

 この大座法師池を舞台にした今回のイベントは飯綱高原イヤー実行委員会の主催。長野市の観光キャンペーンとして通年で行なわれるさまざまな行事の一環として発案されたもので、N[エヌ]は実行委員会の意を受けて、この一日のイベントのコンセプトからプラン、セッティング、当日の運営までを実行委員会と恊働して行ないました。

 この日の様子は高井さんが雰囲気のよく伝わるレポートをしてくれているので、今回は企画原案を案出した立場からの感想と、このテーマに関する所感を記しておこうと思います。

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 一番最初にあったテーマが「エコロジー」でした。このあたりの湿地帯はいわば麓に広がる善光寺平の水源地のひとつ。大座法師池をはじめ飯綱高原に点在する湖沼から入り込んだ山ひだを伝って、幾筋もの沢が麓の渓谷を流れる裾花川に注ぎ込み、疎水となって善光寺平を潤してきたのです。
 どこも同じですが、山が美しいと水は清らかです。日本列島は山岳が多く、山には豊かな森林が広がっています。日本の水がおいしいのはこの地形的な幸運と気候的な幸運に拠るところが大きいのです。日本の人々は、もっと山や森林について意識的になった方が良いと思います。おいしいお酒を飲むためには山の環境を整えなければいけません。

 「エコロジー」といってもいろいろな観点があります。そして、これについて論じようとするととっても長い文章になってしまうので思いっ切りはしょって、今回適用した「エコロジー」の捉え方を簡単に挙げておきます。

 「循環型のアイディアであること」
 「持続可能なかたちを目指していること」
 「自分の手を使って作るものであること」
 「消費経済的な文脈で規定されたものではないこと」
 「スローガンを唱えるためのものではないこと」

 会場を作る資材、竹テントも、テントギャラリーのアートも、グリーン・プログラムも、カフェやお店も、そして湖上ステージの音楽も、今回はこのあたりの感覚に適合したもの、アイディア、人たちに集まっていただきました。

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GREEN LAB のテント、ソーラークッカー、グリーン・トークセッション

 グリーンプログラムと名づけた部分、いわゆるエコロジカルな活動をしている人たちに参加していただく部分なのですが、今回このグリーンプログラムの基軸を須坂市のGREEN LAB に担っていただきました。
 GREEN LAB は、もともとスノーボーダーのチームです。雪山で遊ぶことから山の環境を考え、単に「山をきれいに、地球を大切に」ということではなく、現代社会が組み込まれてしまっている反人間的、反地球的な構造からの離脱を目途した産業の創設を視野に入れて活動しているのです。
 具体的には、長野県で採れるカラマツなどの間伐材を利用したスノーボードや木製遊具の企画開発、製造をしながら、夏は農業に携わり冬は雪山を滑走する、森林を中心に農山村で豊かに、地球を磨り減らすようにではなくて、持続的に自然との共生をしながら暮らして行くためのライフスタイルを提案しています。

 グリーンプログラムは、このGREEN LAB を軸に、森や林、山のことや農業に関して適切と思える取組みをしている人たちに集まっていただいたわけです。

 ごくう会は上田市のグループ。地球環境を保全しながら永続性のある活性土壌を作るための技術を確立しています。「いきいきみどりちゃん」というバクテリアを使い、その土壌とそこに生息する動植物や微生物のことを考えながら、その土地に合った活性土壌の作り方を試行し、元気な土からおいしい野菜を産み出し、それを適正な方法や価格で販売するまでを構築します。それらのプロセスを旧来の市場経済や統制農業のような効率重視の画一的な仕組みではなく、その土地や地域に備わっているものを使って組上げようというコンセプトなのです。あ、有機燃料も作れます。

 NICEは、環境、農業、福祉、教育、文化などさまざまな分野でワークキャンプなどのボランティア活動を行うNGOです。長野県内でも清内路村などで継続的にワークキャンプを行なっていて、村の中と外を面白く豊かに繋げる活動をしています。
 みどりの市民、市民の森づくり、CLUBSUNDAY、マイ農家クラブ、いろいろな団体が持続可能な循環型の仕組みを、この地球環境の中にセットしようと努力しています。

 戦後、経済効率を一義的に追求し、森林を放置し、農地を切り捨て、化学肥料や農薬で土壌を汚し、ゴリ押しの大量生産大量消費を長い間続けて崩壊させてしまった日本の基調文化としての農業や林業を、こういうひとつひとつの取組みによって甦らせることができるかもしれないと思います。

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テントギャラリー

 テントギャラリーは、数年前に勝山ゆかこさんから聞いた話が元になっています。勝山さんは人間の裸の感覚から絶対に離れない表現を、それこそのたうちまわるようにして続けて来ているアーティストです。絶対美術(という呼び方があるかどうかわかりませんが……)から早い時期に離れ、汎用的な美術の概念ではない作品が増えていった頃、取組んでいたのがテントギャラリー。「散歩してたら突然……」普通の風景の延長線上にアートを置きたい、という発想で始まった勝山さんのテントギャラリーの話でした。
 大座法師池周辺に広がるカラマツ林を見た時、その話を思い出したのです。この林の間に地球や時間や自然な人間の姿を感じさせる興味深いアートが点在したらさぞかし……。

 けれど、結果的にあまり理想の形に近づけることができませんでした。
 テントの配置がいろいろな関係でイメージしていたものとはちょっとずつ違う形になって行き、最終段階、竹テントを現場で組立てるときに四苦八苦、無理矢理ひねりだした配置だったのですが。

 追いつきませんでした。

 勝山さんをはじめ、本濃さん、小池さん、スイッチマンのおふたり、みなさん、うまく配置できていさえすればそれぞれに機能して、このカラマツ林の中で訪れた人々の想像力を爆発させうる表現を持ち寄ってくださったのですが。
 (テントギャラリーの様子は高井さんのレポートをご覧下さい)
 今回の失敗は、次にこういうことを企画するときの課題として忘れないように取っておくことにします。
 次は必ず。

 アートとエコロジーの関係は密接です。あるいは、同じような役割を持ったものでもあります。環境エンジニアにアートディレクションを習得した人が多いのもその表れだと思います。
 両方とも人々の生活を豊かにする技術です。両方とも自分の手で作ることを基本に置きます。両方ともお金を追い求めるものではありません。両方とも精神性や誇りを大切にします。両方ともクリエイティヴです。
 現代社会が直面している閉塞状態から抜け出すために、このふたつの分野は両輪といえるくらいに重要な要素なのではないかと思ったりしています。

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湖上ステージ

 午後4時から始まった湖上ステージの音楽は、それぞれ、よくあるジャンル分けで考えるとまず一緒にはならない4組だったと思います。それぞれの音楽の説明は省きますが、とにかく、それぞれバラバラな世界感のライブ・パフォーマンスをしっかりとバインドしていたのは、それぞれが地球の声を聴くことのできるアーティストだという共通素因。表現形態ではなくて表現の根底にある姿勢が通じているのです。

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HARCO

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Leyona

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オギタカ&矢嶋リョウ with 星山剛+種山裕一

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白井貴子

 白井貴子さんはこのイベントのアンカーでした。イベントのテーマをエコロジーに据えた時、一番最初に発想したのが彼女に参加してもらうことでした。
 日本の無個性音楽商品濫造に迎合できず1985年のブレイク直前でロンドンに移住。以降、彼の地で体得したオーガニックな生活を実践しながら自分のペースで個性的な活動を続けている人です。

 昨今の流行で「エコ」を口にするアーティストは急増しています。悪いことではありませんが、あ、いや、良いことだとは思いますが、最近のマス媒体で起きている表層雪崩のような「エコ」と同じく、なんか本質が抜け落ちているかんじがして仕方ありません。
 今回参加して下さった4組のアーティストは、取組み方はさまざまだけれど、それぞれ自分の生活の中でエコロジーを実践している人たちです。声高にスローガンを唱える人はいません。けれど、自然に、自分の手を使って、地球と仲良しなことを続けている人たちです。わかりにくかろうがなんだろうが、自分の方法で、たぶん別に取沙汰されなくても。

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 コンサートの終わりには、飯綱高原の婦人会のみなさん手作りの200本のキャンドルが灯されました。植物性廃油を使ったキャンドルです。

 カフェ、グリーンマーケットも閉店。大座法師池は夜を迎えます。

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 今回は「オトナリ飯綱高原」のキャンペーンの一環として行なわれた「GREEN SESSION」でしたが、これは今後継続的に行なわれるべきアイディアではないかとも思っています。

 長野市上千歳の「SlowCafeずくなし」が今回のイベントに積極的に関わってくれたことは、おいしいご飯屋さんが勢揃いして来てくれたということ以上に、自然、農業や林業を基調にした自立のためのネットワークが「GREEN SESSION」の推進に力を貸してくれるという大きな意義を生みました。
 長野県という豊富な森林資源と高い山に囲まれた地域、水がきれいな冷涼な地域、おいしい農産物が他の地域よりもたくさん生産できる地域では、地球を磨り減らすようにして生きて行くのではなく、地球と一緒に、自然の中で、人間の気持ちを理由にした生活スタイルや産業を構築して行ける可能性は高いはずです。日本という国の状況や行政、政治も大きく影響することかもしれませんが、少なくとも、市民レベルでの認識は高める必要があって、自分のことは自分で、自分の手でいろいろなものごとを創造して行く姿勢を持つことは必ず問われることだと思います。

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 イベントが終わった翌朝のこと、2日前にみんなの手で組み上げてもう随分愛着の湧いた竹テントをひとつひとつ分解しながら、またふたたびこれを組み上げて、長野県のあちこちの野山をキャラバンして歩いたら楽しいだろうな、という妄想がふっと脳裏をかすめたのでした。

GREEN SESSION。またいつか、どこかで。

(写真:寺澤幸文、宮内俊宏 文:宮内俊宏)

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