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N News and Report

どうなんだ権堂!? ③

2009.12.31更新

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2009年最後の "N News&Report" は、みたび権堂です。

 2009年秋、Nは長野市善光寺門前の商店街・権堂を舞台にしたふたつのイベントを開催しました。
「権堂劇場〜国定忠治まつり〜」
「〜権堂映画館コンサート〜ハンバートハンバート小夜曲(セレナーデ)」

 権堂商店街を舞台にした路地めぐりや青空マーケットを背景に、権堂の歴史的なランドマークである秋葉神社と長野ロキシーに場所を借りての野外劇とコンサート。それぞれのイベントの様子はこちらのレポートをご覧下さい。
「権堂村に、咲き乱れるは笠の花。」
「[N-ex8] 〜権堂 映画館コンサート〜ハンバートハンバート小夜曲」
「[N-ex8] 〜権堂 映画館コンサート〜ロキシー広場前マーケット編」

 神仏混淆の時代から江戸時代を経て現代へ、信仰の回廊と世間が交わる場所として歴史を重ねて来た花街・権堂。このイベントを契機にあらためて歩いてみて感じた独特なこの街のいろいろを拾い集めて、このレポート「どうなんだ権堂」シリーズでお伝えしています。
「どうなんだ権堂!? ① 2009秋」
「どうなんだ権堂!? ② 2009秋」

 もっと早くその③を記事にしようと思っていたのですが、あっというまに年の瀬、とうとう大晦日になってしまいました。またいくつか、感じたことをお伝えしようと思います。

 ◆◇◆

 権堂のアーケード商店街。

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 ご多分に漏れずシャッター街です。日本全国どの地方都市へ行っても見られる光景ですが、権堂の場合は普通の商店が空き店舗になっただけではなく、特に2008年の秋に条例が改正されて「客引き・客待ち規制」が強化されてから風俗店も軒並み退散。風俗店およびそれに類する店舗、周辺の店舗の8割近くが権堂から姿を消したという話を聞きます。

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 長野市の街並は全体的に、効率重視でごちゃごちゃと建造物を累積させたようなタイプの街です。そこに住む人や歩く人のことをあまり考えずにコンクリートを流し込んで敷きつめたような街です。そこにある地形も風土も歴史もお構いなしに造られるので、感性に響くところのない街になります。
 権堂もそんな長野の街の一部、ごちゃごちゃした街なのですが、ちょっと違うのは、その場に溜まっている空気がなんだか独特なのです。ものすごく個人的な話ですが、だから権堂、なんだか気になるのですね。

 さて、効率重視でできあがった街によく見られる状態があります。建てる人が自分の敷地のことしか考えていないために景観が崩れてしまい、街の魅力が削がれてしまうのです。

 秋葉神社の前の広場。

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 アーケードの支柱や電柱がてんでばらばらに立っているために、秋葉神社の鳥居や石灯籠が紛れてしまい、神社の存在感がなくなっています。アーケードはアーケードのことだけを、電柱は電力会社のプランだけを考えて立てられているのです。
 秋葉神社といったら権堂の守り神。裏手には包丁の神様が祀られた四條霊社、国定忠治のお墓もあります。そんな神社への敬愛の念もなく、そこにある歴史や街の物語のことも考えずにアーケードを造ったり、舗道のタイルを敷いたり、電柱を立てたり、いろいろが造られているのです。
 隣りにあるイトーヨーカドーの広場も、もう少し秋葉神社の境内との視覚的な関連性を考えてデザインされていたら、もっと美的で奥行きのある空間ができていたに違いありません。

 別にお金をかけて大規模にきれいに整えるばかりが景観を整えることではありません。造るときに、その場所の歴史のことや、人々が集う空間であることや、そこにある風景全体のことを少し考えれば大丈夫なのです。

 これは、弁財天の境内です。

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 お地蔵さんや石碑の背後ぎりぎりまでビルの外壁が迫っています。かなり美しくありません。とても窮屈そうで、そこに弁財天があるという精神性がビルの壁に圧し潰されてしまっています。弁財天のこと、そこに集まる人々のことを考えたら、たぶんこんなことしませんよね。
 自分の敷地なんだから別にぎりぎりまでビルを建てたって誰に文句を言われる筋合いもありません。けれど、そのために、この街の大切な拠り所だった弁財天には、もう人が集える雰囲気はありません。

 たとえば、どこへ行っても街並が美しいヨーロッパでは、そこに建物を建てるということは社会的な責任が生じることと考えられています。なので、自分の敷地のことだけではなく、隣りのこと、まわりの風景、街全体のことを視野に入れて自分の建物を建てるのです。お金はあるけどセンスには自信ない、という人は、その責任を全うするため設計士と別に景観のデザイナーを雇うこともあるそうです。日本のように「俺が金を出すんだから何やったっていいだろ」なんていう人は社会的な責任を果たせない人なので、建物を建ててはいけないのです。

 近年の東京では、一街区をまるごと作りかえてしまう大規模な開発が増えています。その場合、街の神社やお寺を開発区域の中に含んでしまうことがあるのですが、開発を手掛けている大手の建築会社では、かつて街の拠り所であった寺社の存在を開発プランの重要な要素と認識して、高層ビルの谷間に埋もれてしまわないように配慮しています。実際にどういうことになるのかは完成してみないとわかりませんが、超高層の居住棟と低層のオフィス棟の間、街の中心に空間を広く取った鎮守の森が描かれた完成予想図を見ると、日本の都市開発に新しい感覚が加えられているのを感じます。

 ◆◇◆

 人の住む街。街は人が人のために創るのです。人間の感覚、人間の体がスケールになっていないといけません。
 前述の新しい感覚で開発された街区を歩いてみると、高層ビルに囲まれているのに居心地の良さを感じます。たとえば、街のあちこちに色々な形の座る場所があります。舗道のあちこちになにげなく配された円筒形、球形、四角、いろいろな形の石。どれも座りやすく配慮されています。ビルの外周に沿って造られた花壇の縁は腰高で幅広く、奥側の方がわずかに低くなっているのでビルを背に座りやすい形になっています。ビルの壁も、巨大さの割になぜか圧迫感や恐怖感がありません。舗道や道路の色も形も、歩く人が自然に居られるデザインが施されています。
 
 いわゆるヒューマン・スケールで街が造られているのです。こういう街が出現するようになったのはこの数年のこと。六本木ヒルズやミッドタウンが人間や景観を無視した居心地の悪い建造物であることを考えると、この変化が見られるようになったのはわずかこの2年ほどのこと、ということになると思います。

 歩いていて座る場所があるかどうか、ということは街の居心地の大きな要素です。

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 善光寺の御開帳のときに気づいたのですが、権堂の商店街のあちこちに座るところがあるのです。たぶんそれぞれの商店が出し合っているのだと思いますが、ベンチや椅子があちこちに置かれているのです。それだけでも随分、訪れた人にとって居心地の良い街になるのではないでしょうか。
 これに、訪れる人々をもてなす気持ちが加わり、空き店舗や広場を面白く使っちゃう知恵と融通性が加われば、そんなに大変なことをしなくても権堂はもっと居心地良くなるような気がします。

 そう、座るところとトイレ、人の集まる場所と楽しい地図。居心地の良い街の必需品です。

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 ◆◇◆

 もうひとつ、最近どこへ行っても見られるのが住んでいる人々の高齢化。

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 「メディカル権堂・入居者募集中」。
 権堂周辺にはこういった介護付きのマンションが増えているそうです。この街から転出して他所に住んでいた人たちが、歳を取って仕事を終えて、かつてすごした権堂周辺に帰って来ているのだそうです。
 こういう方々が集まり、時折たずねて来る孫と一緒に遊びに行く場所、孫に何かを買ってあげる場所が、権堂のアーケードの中にあったら楽しいのではないでしょうか。そして時折、ネオンホールやロキシーや、はたまた奈良堂にやって来るサブカルチャー好きな若者たちと交わるような場所や機会があって、若者たちはおじいちゃんやおばあちゃんの知恵を受取る。
 居住区とアーケード街の距離をできるだけコンパクトにして、道すがらには、ちょっと休んだり世間話をするような街の縁側があり、アーケードに入ると世代を越えて交わることのできるお店、お茶屋さんや映画館、神社の境内、サロン空間やイベントがあちこちにある。

 ……そんな空想にふけりながら権堂を歩き回った2009年でした。

 居心地の良い面白い街を創るにはとても長い時間と根気のいる話し合いが必要のようです。街づくりに成功している小布施なども、住んでいる人や企業、行政が何年もかけて話し合いを重ねた末に、あの素晴らしい街を創り上げているのです。

 とても独特な歴史と空気を宿している権堂。ここをふたたび人の集まる魅力的な街にするには、そこにある歴史と空気を利用することが一番有利なはずです。どこかの街を真似するんじゃない個性的な権堂商店街。いつかそうなって欲しいものです。

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(写真、文:宮内俊宏)

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